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講    演

藤森 隆郎 (森林生態学研究者 農学博士)

日本が誇る生態学者。モントリオールプロセスの会議に日本代表として、参加。その他、林業の人材育成のカリキュラムづくりなどを歴任。著書に『森との共生-持続可能な社会のために』(丸善2000年)『林業がつくる日本の森林』(築地書館2016年)など。

 

著書『林業がつくる日本の森林』「はじめに」より

 

私は国立の研究所で「森林生態系に基づく森づくりの研究」に長年従事してきた。若い間は自分の専門分野の研究に専念していたが、やがて自分とその周辺の研究成果が現場にどのように活かされ、社会的にどのような貢献をしているのかに疑問を抱くようになってきた。それはもちろん私自身の努力不足によるところもあるが、森林と林業の現場と研究の間に大きな隔たりがあり、現場と研究の世界との間に大きな隔たりがあり、現場と行政との間の隔たりがさらに大きいことが痛感されるようになってきた。そして森林所有者や林業経営者の意欲はどんどん低下し、現場の技術力は低下し、農業の不振とも相まって農山村は過疎化し、持続可能な社会の基盤が失われてきてることに大変な危機感を持つようになってきた。そのために一研究者としてだけでなく、一市民の立場として日本の森林と林業のあり方をいろいろな立場の人たちとともに考えていかなければならないと考えるようになった。それが本書を執筆した理由である。

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